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英空港に置き去り? ツアー客が旅行会社を提訴 1

2013.06.10

英空港に置き去り「頑張って帰って」 ツアー客が阪急交通社提訴
SankeiBiz 2013.6.5 19:45

添乗員に置き去りにされて精神的苦痛を受けたと主張する男性が、仙台地裁に訴えを起こしたというニュース。「頑張って帰ってきてください!と言って客を置き去りにして帰ってきた。ひどい」とネット上で騒ぎになっていますね。
旅行会社の顧客相談室に在籍していた私としては興味をひかれる話題ですが、当の男性にしてみれば慣れない外国でさぞ心細い思いをされ大変なご経験だったことと思います。まずは無事ご帰国されたことにお喜び申し上げます。

さて、緊急事態においては当然、救済者たるべき添乗員が全力でもって旅行者のケアにあたるべき――という、「添乗員ならアタリマエ論」が大多数のご意見のようです。
また、「ひどい」とネット上で糾弾されているのは、添乗員が言ったとされている「頑張って帰ってきてください」という言葉が与える突き放した印象が原因のように見受けられます。まるで他人事のようで添乗員はあまりにも無責任ではないか?と思われているようです。

ここで、私の視点でこのケースを見直してみたいと思います。

まず、世論の傾向に少なからず影響を与えている「頑張って帰ってきてください」発言。
本当にこの言葉どおりに発言したのか?会話の前後関係によっては違ったニュアンスが読み取れるのではないか?この言葉どおりだとしたら添乗員はどういう意図で発言したのか?
添乗員の職務として求められるレベルの努力義務を放棄した問題発言なのかどうかを確認してみたいところです。

もしかしたら当の男性から「搭乗ゲートから戻って私が帰国できるように手伝ってほしい」と要望され、添乗員が「申し訳ありませんがすでに搭乗してしまったので、そちらへ戻ることができません」と応答し、「じゃあどうすればいいんですか」「まずはご自分で航空会社のカウンターに行って…」「ひとりで何とかしろってことですか?」「…(力づけるつもりで)頑張ってください」などのような会話が交わされたのかもしれません。※もちろんこれは想像上の会話です。

私の経験上、発言を責められるケースでは往々にして会話内容が短縮されて、「そんな感じのことを言われた」と主張されることが多くありました。
「さっさと帰れみたいなことを言われた」というお客さまの申し出を該当社員に確認すれば「『申し訳ありませんがこちらでは取扱いがございません。もしかしたらA社の扱いかもしれませんので、そちらへ行かれてみてはいかがですか』と案内しました。さっさと帰れなんて絶対に言っていません」なんてこともザラです。

「頑張って帰ってきてください」は、正確にはどういう応答がなされたのか。
この発言は男性側の主張なのか、添乗員ひいては旅行会社も認めた発言なのか。
添乗員はどういう意図でこのように発言したのか。

報道においては文字数制限がある中で簡潔に記事にすることが求められているので、どうしても判断材料が限られてしまいます。報道された一文ではうかがい知れない背景に濃密な事実関係の相関があることに気づかないままでいると、問題の本質は見逃されてしまい、間違った見識を持つことになりかねません。

企業発言が問題視されている場合は、正確な発言内容と意図、その時の状況をできるだけつぶさに確認してしっかりと事実関係を把握したほうがいいでしょう。それが把握できないうちは、その企業が無責任かどうか安易に判断することは避けたいと考えます。

他にも見直しポイントがありますので、次回もこのケースについてお話しします。

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